「あなたみたいな男の人を、大罪人っていうんだろうね」

「クズな遊び人の方で噂が通ってて、よかったよ」


ふふ、と笑いながら。香月雅は、私がとりそこなった台で、引き続きユーホーキャッチャーを楽しむ。

黒いネコと白いネコ。それらがマスコット化されたキーホルダーが、ケースの中に大量に置かれている。手のひらサイズなんだけど、大きな瞳が可愛くて。見つけた瞬間に「可愛い」と口にした。

すると、一分後にはこの有様。


(なかば強引だったけど、なんか楽しいかも……)


本当はやる気なんてなかったんだけど。香月雅が「やろう」と、私の背中を何度も押したのだ。


『あれがほしいの?なら、やってみようよ』

『どうせ取れないから。いい。やらない』

『やってみないと分からないよ。それに失敗しても、二人なら楽しいから』

『!』


悔しいけど。
香月雅って、言葉選びがステキだと思う。

元カレだったら、私が「やらない」って言ったら「ふぅん」で終わり。私の隠れた気持ちに気付かず、ユーホーキャッチャーの前をスルーする。


だけど、この男は気づくのだ。


本当は、私がやりたいって思ってることを。失敗した時、この場のテンションが下がる心配をしていることを。

それらを分かった上で、後押しする。


『やってみないと分からないよ。それに失敗しても、二人なら楽しいから』


こういう時、香月雅から紡がれる言葉に。

どうも私は弱いみたい。