「もしかして結婚しようって言ってる?」
「何回も言ってる」
「私たちまだ高校生って知ってる?」
「……嫌って言うほど分かってる」
まるで吐き捨てるように返事をした彼に、どうしようもない笑いがこみあげる。
「あと三年もしない内に、私たち卒業って知ってる?」
「……知ってる。長いよね」
「そうしたら私も〝雅と結婚したい〟と思ってるの知ってる?」
「それは今、初めて知った……」
「ふふ」
驚く雅の顔をすばらく見つめた後、触れるだけのキスをする。少ししてハッとした雅が「あと一回?」と、膨れっ面で確認した。
これから一生一緒にいるというのに、こんなにもキスを名残惜しく思うのは……きっとこの人だけだ。あと私も。
「ねぇ雅、もしかして私たち似たもの同士かな?」
「ふっ、それは俺も思っていたところ」
「ふふ。そっか」
笑い合って、また唇を合わせる。体の内側から満たされていき、二人して屋上で溶けそうになった。
危険な香りが満ちる時。
ちょっとだけ歪んでいた私たちは、心地いい愛に溺れていく。
「ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険」
【 完 】
next→SS*雅*