「一目惚れだったけどさ、仁奈を好きになって良かった。だって片思いしてる間、すげー楽しかったもん。だからサンキュ。いい思い出になった」

「響谷くん……。でも私、ろくな姿を見せてないよね。カッコ悪くて、失礼なことばかりしちゃって」

「いいんだよ。好きな奴のどんな姿だって、俺は見ていたいんだから。特に仁奈は、見ていて飽きなかったしな」

「いい意味、だよね?」

「もちろん」


一呼吸おいた後。響谷くんは静かに続けた。


「ずっと見ていて飽きないくらい可愛かったって、そんな昔話だ」

「!」


笑いながら、響谷くんは私の横を通り過ぎる。触れるか触れないかの優しいタッチで、私の頭を撫でながら。