「響谷くん……」

「ごめん仁奈。俺に用だよな?ここってのもアレだし、向こう行かね?」

「う、うん」


あっけらかんとした態度の響谷くん。だけど、いつもより元気がないように見える。

……当たり前だ。私と雅が付き合った噂を聞いてるだろうし、その時の衝撃はスゴイものだったに違いない。

それでも、こうして私を庇ってくれるのだから。響谷くんは、本当に優しい人。


「ここで良いか。それで、話って?」


廊下を少し歩き、階段の踊り場に立つ。人気のない場所だから、落ち着いて話が出来そう。


「メール、送らなくてごめんね」

「いいって。俺が待ちきれなかっただけだし。でも仁奈からメールがなかったっていうことは、〝そういう事〟なんだよな」

「……うん」


グッと下唇に力を入れ、頭を下げる。