「雅のことに必死すぎて、ぜんぶ忘れてた……」


響谷くんは私のことを好きと言ってくれた。だけど私は、雅ほど大事なものはなくて。小夜ちゃんが「似合うと思う」と言ってくれたススメも退け、雅をつかまえに行った。


「どうしてもつかまえたかったし、つかまえたらつかまえたで幸せが溢れちゃって……結局、忘れてたし」


でも、だからと言って、忘れていいことではなかった。

響谷くんが好きと言ってくれたことは素直に嬉しいし、あの時の私は心を救われたんだから。あの時はちょうど、雅に告白をスルーされ落ち込んでいたから。

自分の魅力が足りないんせいだって思っていた。だから、そんな私を好きと言ってくれて、嬉しかったんだよ。


だから、ちゃんとお断りしよう。

メールじゃなくて直接、私の口から――


「ねぇ香月くん。さっきから仁奈の心の声がダダ洩れだけど、放っておいていいの?」

「むしろ敢えて放ってる。新田さん、そのボイスメモに仁奈の声も入ってるよね?後で俺に送ってほしいな。次の授業で聞き倒したい」

「あいよー」


テンポが良い二人の会話が終了する。私が席を立ったのは、ちょうどその時。