「私、行って来る!」


ベッドを降りて、香月雅の部屋を飛び出る。後ろで「二人そろって帰らないと許さないんだからー!」と怒声で送り出してくれる美麗ちゃん。

ありがとう、美麗ちゃん。

香月雅のことが大好きなのに、それでも私を後押ししてくれた。いつも小夜ちゃんを見てるから、推しの存在がどれほど大切か、私も分かってるつもりだよ。

香月雅はあなたのお兄ちゃんであり、最推し。そんな人と向き合うチャンスを、私みたいな女子に与えてくれてありがとう。情けない年上でごめんね。恋愛に疎い私でごめんね。

だけど、もう大丈夫だよ。美麗ちゃんが背中を押してくれたから。香月雅に、恋を教えてもらったから。


「香月雅!」

「え、仁奈?」


やっと分かったの。

私は正しい恋がしたかったんじゃない。だからと言って、楽しい恋がしたかったわけでもない。


「好き、私と付き合って!」


私は世界でたった一人の、あなたと恋がしたかったんだ。