「陛下を信じよう——」
 深く湯に浸かって、緑の木々や赤い花をじっと見つめながらそう思った。
 口元には自然に笑みが浮かんでくる。こんなに気持ちがいい時間を持ったことは今まで一度もなかった。
「なんて気持ちがいいんだろう⋯⋯」
 フウルはとても幸せだった。
 生まれてから初めて感じる、大きな、大きな幸せだった。

終わり
不幸だったフウル王女は幸せになりました!
お読みいただきありがとうございました。この短編はここで終わりですが、この短編の『長編・BL
オメガバース版(18禁)』をAmazonで販売していただきました(2月のベストセラー入り)
『偽花嫁と溺愛王』のタイトルです。もしよかったらAmazonを覗いてみてください。長編版は『さらなる溺愛の連続&ざまぁ展開』付きです。エチエチな短編『初夜編』や、ほのぼの『子育て編』の短編もついています!

※ちょっとだけですが、Amazon版から転載しましたので、よかったらお読みください。お風呂シーンからの続きです!



 そのとき——。
 湯気の向こうに誰かの姿が見えた。とても背の高い男性だ。こっちへ向かってくる。ガウンを脱ぎ去り足元に落とした。全裸だ——。
 ——え? もしかして、陛下?

*****

 その裸の人物は間違いなくリオ・ナバ国王だった。
 ——どうしよう!
 フウルはパッと両手で首を押さえる。
 アルファとオメガは性が違う。つまりそれは男と女の関係に似ていて、裸を見られることはすごく恥ずかしいことなのだ。とくにオメガフェロモンが出る首元の素肌を見せることは、女性が胸をさらけ出すのと同じでものすごく恥ずかしい。
 焦っているあいだに、湯煙を透かしても逞しさのわかる姿が、ゆっくりとこっちに近づいてくるではないか!
 リオ・ナバ国王はフウルが湯船にいることに気がついていないらしい。南国の木々の大きな葉が邪魔してこっちが見えないのだろう。
 ——隠れなきゃ!
 と思って、キョロキョロと見回すけど隠れるところなんてなかった。
 ——どうしよう? どうしたらいい? そうだ、潜ろう!
 となぜか思ってしまった。大きく息を吸って、湯の中にぶくぶくと沈んでいく⋯⋯。
 そのまま息を止めた。
 じっと動かないで我慢する。
 すると目の前に長い足が現れた。リオ・ナバが湯の中に入ってきたのだ。
 王が体を沈める。逞しい腰が見えた、そして⋯⋯。
 ——うわーっ! これって⋯⋯、これって⋯⋯?
 湯の中でゆらり、ゆらりと揺れているのは王の男の部分だった⋯⋯(長編BL異世界オメガバースAmazon版『偽花嫁と溺愛王』に続く)