大きな円形で、風呂というよりまるで人工の泉のようだ。絶え間なく湯が流れ込んでいる。水音がサラサラと耳に心地いい。
「地下から熱い湯が噴き出しているそうです。この仕組みも陛下が考えられたんですよ! すごいでしょう?」
「ええ、ほんとうにすごいわね」
 ガラスの天井からは明るい太陽の光が落ちてきて、温室全体がキラキラと眩しいほど明るかった。ぼんやりと見惚れていると、「クシュン⋯⋯」と小さなくしゃみ。雨に濡れた体が冷えてしまったらしい。
「お風邪をひかれたら大変です!」
 慌てるミケールに服を脱がされ、押し込まれるようにして湯船につかる。
 心地よい温度だった。体の力が抜けて、とろけてしまいそうだ⋯⋯。
「あっ! お着替えを持ってくるのを忘れました! すぐに戻ります」
 ミケールが慌ててガラス張りの湯浴みの部屋を出ていく。
「急がないでいいわよ。転ばないように気をつけて!」
「はい、王女さま! お気遣いありがとうございます!」
「⋯⋯かわいいわね」
 くすりと笑って湯に浸かりながら思い出すのはリオ・ナバ王の言葉だ。
 ——俺に任せてくれ。
 その言葉に心が軽くなっていた。
「力強いお言葉だったわ⋯⋯」
 その言葉のおかげで、『きっと大丈夫』と心を強く持つことができている。
 ミケールの明るさと心地いいお湯も、すべてが、暗い気持ちを吹き飛ばしてくれる。