ミケールに案内されて廊下を歩きながら聞くと、ミケールは大きくうなずいた。
「はい! いつも叱られてばかりですが、とても優しい兄でございます」
 湯浴みの部屋は、城の中庭を通り抜けたところにあった。壁と天井がガラスでできている。温室になっているらしい。
 扉を開けて中に入ると暖かい空気に一気に包まれた。大きな葉の南国の木々が茂り、赤い花々が咲き乱れている。
「まあ、すごくきれいね!」
 思わず感嘆の声を上げた。ほんとうにとても華やかで美しい部屋だ。まるで夢の中に出てくる理想の楽園のようだ。
「陛下がお作りになったんですよ。陛下は、我が国にもっと木々や花々を茂らせたいと思っていらっしゃるんです。わたくしの国は、きっといつか、この温室のような緑に包まれた場所になりますよ、きっと美しい緑がいっぱいになります!」
「そうね。きっとそうなるわよ⋯⋯」
「お風呂は奥にあるんですよ! こっちです!」
 ミケールが走っていく。その後をついていくと、目の前に大きくて真っ白な大理石の湯船が現れた。