馬車が大きく揺れ始めた。窓の外を見ると風景が変わっている。どこまでも果てしなく続く砂漠だ——。
 太陽の光を受けて、サラサラの砂が金色に輝いている。
 砂丘だ——。
 馬車を下りると、リオ・ナバ王は従者たちを馬車のそばに残した。
「少しふたりで歩こう」
「はい⋯⋯」
 金色に光る砂の上を歩いていく。砂はほんとうにびっくりするほどサラサラで、靴やズボンについてもすぐに風に吹かれて飛んでいった。
「数千年前はこの地にも木々が生えていたらしい。だが、長い間の乾いた気候で、すべてが砂になった——。我が国の大半が砂漠なんだ」
「そうなのですね⋯⋯」
 砂漠はとても美しい。だけど木々は一本もなかった。ここでは植物はもちろん動物すら生きていくのは難しいだろう。
「さっきカカオ農園を見ただろう?」
「はい」
「あの場所も元は砂漠だった。だが今は緑の農園だ」
「ほんとうにすごいことです⋯⋯」
 きっとものすごく大変だったんだろう——、そう思ったとき、ポツポツと雨粒が落ちてきた。
「雨——?」
 思わず悲鳴のような声をあげてしまった。晴れているから安心していたらやっぱり雨になってしまったのだ⋯⋯。