5、王子様と血結び糸、証明

「ロザリット、ドレスの採寸をしたいのだが、せっかくだからパパとお買い物しよう。欲しいものをなんでも買ってあげるぞ」

 アークデス・ブリッジボート伯爵が帰った数日後。
 パパは街に連れて行ってくれた。
 
 城壁に囲まれた中世の都市は、石畳の道を歩く人々でにぎわっている。
 私とパパは馬車に乗ってお店まで移動した。
 市場広場には多彩な露店が立ち並んでいて、窓から外を見るのがとっても楽しい!
 
 ふわふわ~っと風に花びらが舞っていて、色とりどりの旗が風に揺れている。
 
 商人たちは商品を並べ、笑顔で客の呼び込み中。
 そんな商人たちの中にゲームの登場人物を見つけたので、私はパパの袖を引いた。
 
「パパ、お願いがあるの」
「う、うおおおお。お願いだと! 欲しいものがあるのかい、ロザリット?」
「パパ、興奮しすぎ……あの商人さんの商品を買って欲しいの」

 パパに「見て見て」とおねだりした先には、商品が売れなくてしょんぼりと店を畳もうとしている若い商人さんがいる。遠い外国から来た獣人さんだ。

 「犬っころの草なんて買えるか」なんてみんなに言われて、今は受け入れられていないけど、彼の取り扱う商品、実はとっても貴重な薬草なんだ。
 それを使うと、なんとどんな毒でも解毒する万能解毒剤が作れちゃう!

「よーし、ロザリットが欲しいなら、全部買おう」
「パパ、他にも色々買って欲しいの」
「いいよいいよ、なーーんでも買う! ロザリットのおねだりはパパを幸せにしてくれるから、もっともっとおねだりしておくれ。ちゅっ」
 
 頬にキスされて、ぎゅーっと抱きしめられる。
 パパは愛情表現がストレートだ。

「ありがとう、パパ」 
 材料や調合道具を買ってもらって、私はおうちに帰った。そして、パパと一緒に万能解毒剤を作った。

 これを何に使うかというと、ブリッジボート伯爵に毒殺される予定の第一王子のシトリ殿下にあげる予定。

 シトリ殿下は珍しい外国産の毒を盛られてしまう。
 医師は毒による症状だと見抜けず、病気だと診断して見当違いの治療を施してしまう。その結果、シトリ殿下はどんどん体調を悪化させて「病死」してしまう……!

 私は、その運命を変えようとしている。
 
「お薬作りごっこ、たのちいねえロザリット~~!」
「パパ、私は真面目なの。あと、私は幼児じゃないから、そのしゃべり方やめてほしい……」
「ロザリットは真面目でしゅねえ」

 ……パパはどんどん甘々のデレデレになっていく! 溺愛が止まらない!