「そんなこと、ないよ。」
「あるよ。俺はずっとしずくを見てたんだから。」
その言葉に喉が詰まる
そうだ、風季はいつだってずっと私を見ていてくれたんだ。なのに私はいつだって凪くんを見ていた。
「今日だけじゃない、いつもしずくの視線の先を辿ると兄貴がいた。」
「……」
乗るはずだった電車がホームに入ってきたのに、私たちは乗り込めなかった。
まばらに降りてくる人と、乗る人たち
言わなきゃ、風季の気持ちには答えられないって。
ぐっと手を握りしめた
「俺そこまでバカじゃない。今、振ってほしい」
電車が去る風がホームに吹き込む
私は、甘え過ぎた。
風季の気持ちを知っておきながら答えを催促されていないからってずっとあやふやして。
結果、こうやって導いてもらわないと言えないんだ。