チャイムが鳴って、生徒たちが下校する。


「恋、帰るよ」


 宗介が声をかけたので、恋は机から顔を上げた。



「どうかしたの?」

「ううん」



 階段を降りて、昇降口で靴を履く。

 昇降口には誰も居なかった。


「昨日の社会の宿題もう始めた?」


 宗介が聞いた。



「分からなかったらうちに来なよ。お前はいっつも書かないで提出するんだから。成績下がっちゃうだろ。」

「うん」



 恋はうわのそらで応えた。


「どうかしたの?」


 宗介が首を傾げた。


「ううん」


 恋は首を振って靴入れから靴を出すと、しゃがんで靴を履いた。