宗介が恋の世話を焼くのは幼稚園の頃からだった。

 人形の取り合いをする恋を叱り、走って転んで泣く恋を慰め、昼寝で寝ない恋を寝かしつけるのは全部宗介だった。

 公園の砂場。

 シャベルで山を作りながら、宗介は恋に説いた。

「お前が狐っていうのが分かったら大変なんだから。お前は絶対、人の見てる所で狐になったりしちゃ駄目だからね。」

「どうして?」

「どうしても。黙って聞きな。狐だって分かったら、人に怖がられたり、苛められたりするんだから。お前をそういう風にさせない。僕の言う事分かった?」

「……」


 幼稚園児の宗介は、恋の頭をぽんぽんと撫でてやりながら難しい顔で言った。


「分かったの。僕とお前だけの秘密なんだからね。」