学校から帰った恋は、家に荷物を置くと、その足で宗介の家に行った。
学校帰り隣の宗介の家に居るのは幼稚園からの恋の習慣で、今でもいつも変わらない。
玄関で靴を脱いでいると丁度宗介が階段を降りてきた。
「部屋行ってて。お茶持ってくる」
宗介が言ったので、恋は階段をあがって二階の宗介の部屋へ入った。
ドアを開けて部屋に入ると、宗介の自室はいつもながらきちんと片付いていた。
青いカーテンのベッドの上に、単語帳が置いてある。
勉強机には参考書が立てかけてあった。
恋は、床に座って壁に寄り掛かると、ちょっとの間考えていたが突然どろん!、と変身した。
もくもくとあがる白い煙が薄まると、そこに居たのは一匹の美しい子狐。
「あ」
お茶のトレーを持って二階に上ってきた宗介は、ベットの上の恋を見付けるともちろん眉を顰めた。
「こら、まーた狐なんかになって。」
そう言いながら、宗介は、子狐の姿の恋を首でつまみ上げた。
恋を腕に抱き直すと、宗介はベッドに座って、屈んで手を伸ばして脇に置いている鞄からキャットフードの袋を出した。
「早く戻りなね。狐の姿じゃ喋れないんだから。」
宗介は、子狐がてのひらからキャットフードを食べるのを見ながら、そう呟いた。