「いっ、…っ、あぁあ、アァアア」


刺さった痛みで男が悲鳴をあげる。



そんな男の皮膚を喰らった刃物を男は勢いよく抜くと、血が止まらない胸に手を当てる。



惨たらしい光景に、これは本当に現実なのかと涙で視界がボヤけ始めた。



「毒が塗ってあるね、この刃物。」


「たすけ……っ、助けてくれ……」


「さっきまで俺を殺そうとしていたくせに、どうしてそんなことが言えるんだろうネ。
 許せない……許せない許せない」


「ひぃ…っ、ぎぃアァアア!!!!」


傷口に親指を突っ込む男。
ガタイのいい男は痛みで野太い声をあげる。



見ていられない状況に、力がでない私はその場に尻もちをついた。



やめて。



「……もう、やめてよ」



ひどい、どうしてそんなことが出来るの、可哀想だ。



恐怖に溺れているはずなのに、あまりの悲惨な状況に言葉が勝手に口の隙間から溢れた。