一体……何がどうなってるの。



さっきまで普通に友達と帰っていた、いつも通りの日常だったはずなのに。



そんなものは容易く消えるのだと、背後の男の存在で実感する。



「るるる、るるる」



男が呑気に鼻歌を歌う。


どこかで聞いたことがある曲調だ。



これって……。




「あっ、」




恐怖と理性が入り交じるなかで、渇いた喉を上下させた瞬間、男は小さな声を出した。



何が起こったかは分からない。




その小さな低い声が気になって、後ろに目をやると
男はツゥー……とフードで隠れた顔で表情は見えないが、口から血を流していた。



その姿に驚いて目を見開いた瞬間、男は私をコンクリートの壁に押し付け振り返った。