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あれからわたしは、次の電車を待って、マンションの最寄りで降り、部屋に戻ってきた……らしい。


記憶がない。

気づけば、制服も脱がずにリビングの広いソファで丸くなっていた。



お母さんはあの人と結婚したんだ。


あの人と結婚するために、わたしを返済金代わりに差し出したんだ。

タイミング的にもそうに違いない。



思えば、相楽さんに引き取られる前日。


とつぜん帰ってきたお母さんの様子がどことなくおかしいな、と思ったんだった。


そのときはまだ違和感の正体がわからなかったけど……。



──『彼氏のところにいるんじゃなかったの?』

──『あー……それが、別れちゃったんだよね〜』



あれは嘘だ。


お母さんは男の人と別れたとき、いつもわたしのせいにして暴れるか、お酒に浸るかのどちらかだった。

本当に別れていたなら、『大好き』なんて言いながらわたしを抱きしめたりしない。