デート中だから、わたしが追いかけたら邪魔になることは頭でわかっているのに。
ただでさえ行動に制限のかかっている身……。
これを逃したらもう二度と会えないかもしれないと思うと、止められなかった。
「お母さん……っ!」
ふたりが改札を抜けてしまう前に、と追いかける。
距離があと数メートルに縮まって、もう一度叫んだ。
「お母さん、待って……!」
その瞬間、一度足を止めた──ように見えたけど、すぐに歩きだしてしまった。
この距離で声をかけて、聞こえないわけがない。
冬亜だってわかってて無視してるんだ。
そんな……。
受け止めきれずに、思わず手を伸ばしてしまう。
「お母さん……っ」
強制的に向かい合うかたちに持ち込んだはずが、次の瞬間、相手の男の人がわたしの前に立ちはだかった。
「なんだね君は」
「あ……、ぁ……」
鋭く睨まれ、喉が凍てついた。