「てことは、冬亜ちゃんは今あのアパートでひとり暮らし?」

「……う」



うん、と頷きかけたけど。

もしレオくんがアパートを訪れたら嘘だとバレてしまう。



「今は親戚の人の家にお世話になってるの……。だから、ひとりじゃないよ」



これも嘘だけど……半分本当。



「そっか……。言ってくれたらよかったのに。僕ばっかり冬亜ちゃんに頼ってばっかで不甲斐ないじゃん」

「っ、ごめん。レオくんのことは誰より信頼してるよ。でも、心配かけたくなくて、言えなかったんだ……」


「……。あの母親ならいつかやると思ってた」

「………」



レオくんが冷たい声を出すのは、いつもわたしを心配してくれているときだ。



「これで冬亜ちゃんもよくわかったでしょ。もうあの女のことは忘れなよ」



真剣な眼差しに囚われる。



「そう、だね」


小さくこぼした声は、誰の耳にも届くことなく消えていった。