「だって、柚菜からめっちゃΩの匂いしたんだもん」
「ぇ、なんで…」
今でも、自分の香水の匂いは感じている。
「βの私でもわかるぐらいで、柚菜をここに置いていったら絶対ダメだって思って、連れてきちゃった」
「そう、なんだ。」
なんでだろう。
今までにこんなことは起きたことがない。
なにか変わったことをしただろうか。
「っ!」
あの、人。
まともにαと触れ合ったのはあれが初めてだった。
熱い唇と口内を犯す熱が鮮明に思い出される。
「…ごめん。もう、帰るね」
不安そうにこちらを伺う葉凪の視線から逃れたくて、立ち上がる。
逃げるように葉凪の家から出た。