この人になら、なにをされてもいいとすら思ってしまう自分がいる。


でも、だんだん息が苦しくなってきた。



「んぅ、っ、」



図ったように唇から熱が離れた。


はぁはぁと肩で息をする。


深呼吸すると、少しずつ理性が戻ってくるのがわかる。


理性が戻ると同時に、私の唇に触れていた物は、今目の前に居る人の唇だったと気がつく。


心臓のドキドキも、最初よりは落ち着いた。



「っ、!」



わたし、知らない人と、キス、した。


自分でもよくわからないけど泣きそうで、思わず鞄を掴んで図書室を飛び出した。


図書室をでて、昇降口にたどり着いたあたりで、私の足は動かなくなった。


地べたにぺたりと座り、呆然とする。


なんとなく、状況を理解したと思う。


おそらくさっきの人はαだ。


遊ば、れた?


涙が溢れ出した。


きっとあの人も私がΩだと気がついただろう。


あの人が私がΩだと広めたら私の高校生活はお終いだ。


どうしよう。


あの人のキスを受け入れてしまった自分もいやでたまらない。