「なっ、なにも、ないですっ」


「そう?

緊張してる?

なにもしないからリラックスしてよ」



ば、ばれてたんだ…


そりゃばれるか。


つっかえながら話してるし。



「わっ、わかり、ました」


「ふはっ、まぁ、ゆっくりでいいよ」



繋がれた手に、少しだけ力が入った。


ぎゅうっと私の手を包み込む、大きな手。


私とは違う、男の人。


そして、α。



「っ、」



顔が熱い。


律希先輩といると、赤くなってばかりだ。



「着いたよ、柚菜」



え、もうついたの?


近くなんだ。



「うわぁ、すごいっ!きれいー!」



うつむけていた顔を上げると、目の前には、初めて見るような絶景が広がっていた。


真っ青な海と空。


遠くに見える町並み。


青々とした山。


ここから見えないものはない、ってぐらいなんでも見える。