どんな人か少し興味がわいた私は椅子をひいて立ち上がった。


本棚の陰から盗み見るくらいなら、相手もきがつかないだろう。


おじいちゃん先生は、どっこらしょ、と

効果音がつきそうな程ゆっくりと腰をあげて、カウンターに戻っていった。


図書室に入ってきた人から見えない位置から、様子をうかがう。


ちらりと黒髪が見えた。


その瞬間、私の心臓はドクリ、と大きな音を立てた。


もっと見たい、近づきたい、という気持ちが大きくなる。



「っ、」



無意識のうちに私は、その人の後ろに立っていた。


スラリと伸びた身長に、黒曜石のような黒髪。


顔は見えていないのに整った顔であることが容易に想像できた。


ゴクリと唾を飲む。


後ろから見ているだけなのに、ありえないぐらい心臓がうるさくて、立っている足が萎えそうになった。