「たいしたことはしてないよ。

すぐわかるから大丈夫」



よくわかんないけど、律希先輩が大丈夫って言うなら大丈夫なのかな…?


“キーンコーンカーンコーン”


チャイムが鳴った。


まだ授業が始まる時間じゃないし、どうしたんだろう。



『朝倉律希さん、朝倉律希さん、

至急、職員室まで来てください』



え、律希先輩、呼ばれてるけど。


なにやらかしたの…?



「やべ、書類出し忘れじゃん。

じゃぁ、職員室行くから」



どんだけ重要な書類出し忘れたら校内放送で呼び出されんのよ…


でも、律希先輩は3年生で受験生だから、ありえるか…


律希先輩、色々適当そうだし。


律希先輩は私にひらひらと手を振って空き教室を出て行った。


律希先輩が出て行ったあとも、部屋から律希先輩の残り香がする。


ふんわりと甘い、バニラのような香り。


柔軟剤とか、香水とか、そんな感じじゃない。