それに俺のって、なに?


私は朝倉先輩の名前が律希だってことを今さっき、知ったのに。



「ここじゃ、周りうるさいから移動しようか」


「えっ、あっ、はい……えっ?」



ゆるく手を繋がれて、どこかに歩いて行く。


フワッと嗅いだことのないような、でも、ものすごく甘くて、ずっと嗅いでいたくなるような香りがした。


この匂い、好きだな。



「めっちゃ慌てるじゃん。

俺に会いに来てくれたんじゃないの?

大丈夫、取って食ったりしないから」



そのまま連れてこられたのは、あの、空き教室。



「座って話そうか」



朝倉先輩は“あの”ソファーに座って隣をぽんぽんと叩いた。



「しっ、失礼しますっ」



ガチガチになりながら朝倉先輩の隣に座る。



「だーめ。

遠すぎ。

もっと近く来て」



こ、これ以上近づくの?


もうすでに朝倉先輩と私の距離、30㎝ないんだよ?


恐る恐る、少しだけ距離をつめる。