何もないわけがない。



「さぁ」



そのクソ男は、余裕そうな微笑みを浮かべて答えを濁した。



「柚菜に何かしてたら許さないからっ!このα野郎!」


「へぇ、オマエ、俺がαってわかったんだ」



クソ男は少しだけ驚いたような顔をした。


そして笑みを深めた。



「何笑ってんのよっ」


「ふっ、……なぁ、オマエ、柚菜の家知ってんの?」


「柚菜の名前を呼ばないで!

………知ってるけど」



こんなクソみたいな男に柚菜の名前を呼ばれるのが我慢ならない。


そもそも、なんでαがこの学校にいるのよ。



「案内して」


「は?なんでアンタなんかに柚菜の家を教えなきゃいけないわけ?」


「オマエだけで柚菜のこと運べんの?」



なんなのコイツ。


いちいち腹立つ。


また柚菜の名前よんだし。



「運べないけどっ!……」


「んじゃ、俺に教えるしかないな」