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「柚菜、帰ったならただいまぐらい言いなさい」


「…ただいま」



普段は優しいけど、礼儀とか、挨拶にはとても厳しいお母さん。


普段はちゃんとただいまを言うけど、今日は、そんな気分になれない。



「…ごはん出来たら呼ぶわね。

聞いて欲しかったら、いつでも言いなさい」


お母さんはきっと、私に何かあったことに気がついている。


それでも、私の、聞かないでで欲しい、という気持ちに気がついて聞かないでいてくれる。



「…うん」



階段を上がって自分の部屋にこもる。


悔しい。


すごく悔しい。


きっとあの人は私がΩだから、なにしてもいいと思ってキスをした。


そもそもなんでαがこの学校にいるのだろう。


葉凪だって、心配してくれたのにお礼も言わずに帰ってきてしまった。


明日、学校に行くのが怖い。