けど、そう思ったのも束の間。
唯川朱俐は私の行く手を阻むように私の目の前に立った。
唯川朱俐のせいで高校も見えなくなる。
「……。…邪魔です、どいてください。」
「…今度じゃなくて今。」
「……は?」
何だそれ?今度って私、なにか約束してたっけ……?
盛大にキョトンとしてしまう。
なにか約束してましたか?って聞くと、おもろーって笑っている。
「今、一回朱俐って呼んでみ?」
「え…っ?」
この人、今、この場で名前を呼べって言った……?
思わず唯川朱俐を見上げると、楽しそうに笑っている。
黒くもなく、ただ純粋に楽しそうな笑顔。
見たこともない透明な笑顔。
何の偽りもない素の笑顔は………
ありえないくらい美しかったんだ。
そんな綺麗な笑顔に私は胸をぎゅっと掴まれたような感覚に陥ってしまった。