「……わざわざ、噂を流す必要あったわけ?」


なぜだかはわからないけど、やっぱり朱俐先輩イラついている。

今見て、はっきりと分かった。





「いやー俺、事実を言っただけっすよ。先輩は、緋彩を庇い過ぎですね。」



火に油を注ぐ。
まさにこの状況を再現するように魅音は不敵に笑って、意味深なことを言った。




……私を庇うっていうのはちょっとわかんないけど。






「そんなことないけど。」


「いや、大アリですね。…フッ、嫉妬ですか?」




「……ッチ。何なの、こいつ。」


珍しく学校という場でも気にせず怒りを目の前に出した朱俐先輩。



というか……初めて朱俐先輩と意見があったかもしれない。





「奇遇ですね、私も同じこと考えてました。魅月さんに言って追放させたいくらい。」


「うるせぇな、何で姉貴の名前出すんだよ。」



今度は魅音が心底不愉快そうな顔をした。
そんなに魅月さんのこと嫌なんだ…。




ちなみに魅月さんと言うのは、魅音の3つ年上のお姉さん。


明るく少し男勝りな性格のしっかり者だ。まぁ、だからのらりくらりしてる魅音とは合わないんだろうけど。 






「はーあ、姉貴の名前出されてイラついてきたから帰るわー。じゃーねー唯川先輩。」


さっさと帰ってください。誰もあんたなんて呼んでないです。

私はそう言いたいのをなんとかこらえ、校舎の方へ視線を逸らした。



そうして魅音はジャリッと地面がこすれる音だけを残して去っていった。