「初めまして。隣の県から来ました。白根魅音(しろねみと)です。魅力な音って書いてみとです、よろしく。あーえーっと質問があったら後で答えるんで。皆さん仲良くしてくださーい。」
と白根魅音は言った。
まるで作ってある原稿を読み上げただけようにスラスラ淡々と喋った。
でも、これはあいつにとっていつものこと。
アドリブが得意でいつもペラペラ嘘のことでも本当のことのように話せる。
将来、詐欺師にでもなれるんじゃないかって幼いながら昔思った記憶がある。
というか……、なん、で……魅音が………?
あいつが、なんでいきなり……?
冷たく心臓が高鳴ってくる。
___白根魅音
昔、私が住んでいた家が隣で誕生日も近いため双子のように育った幼馴染で……言い換えれば私の……"命の恩人"だ。
久しぶりに魅音を見たせいで、"あの日"が鮮明に蘇ってくる。
テツの匂い、響く怒号、怪しく光る刃物……。
そして……、お母さん……。
もうすべて忘れて楽になりたい。
もう苦しみたくない、よ……っ。