「……何で……?」

 そんなに優しいの?
 いつもは怖い顔しているあなたなのに。

 ――私は、一方的に相手を知っていた。

「ふ、ふええええん」
「え、え。どした?」

 堰を切った思い、溢れ出すと、止まらなかった。
 彼はコートのボタンを全部外すと、泣いている私を人の目から匿うように覆ってくれた。

「とりあえず、落ち着いて。店入ってあったかいものでも飲もう」