聞き間違いかとも思ったが、確かに二度も聞いている。これまでアレクシスが自分を指す時は他人行儀な『私』だったはずだ。
 ほんの少しでも気持ちを許してくれたのだろうかと、一瞬でもそう考えてしまった自分を戒める。 

 ——そんなはずがないもの。

 
 *


 休日の王都は多くの人々が往来し、街道には露店も出ていてとても賑やかだ。
 学園に通う以外の外出を許されていないエリアーナにとっては物珍しく、馬の背に揺られながら、目を輝かせてそれらを眺めた。

「見て、白薔薇の騎士様よ……!」
「そういえば最近ご結婚されたのだとか。と言うことは、あの方が若奥様?!」

 立派だ、素敵だと道行く人々が口々に囁く。
 若い女性たちはため息をついて羨望の眼差しを向けるが、エリアーナが気付く事はない。