「家紋が入った馬車では色々と都合が悪い。馬の背に座るのは平気か?」
「ぁ……、はい、大丈夫です」

 ——た、たぶん——っ。

 馬に乗るのなんていつぶりだろうと考える。記憶があるとすれば、ごく小さい頃ポニーに跨ったくらいだ。

「何を見ている? ほら、下で支えるから先に乗って」
「さ、支えるって……?!」

 エリアーナがおずおずと手を出せば、手首をぐいと引かれ、馬の真横に立たされる。
 戸惑いながら鎧に片足を乗せようと奮闘していると、突然に後ろから抱え上げられた。あっ、と驚く暇もないまま馬の背に両手を置き、力を込めて身体を押し上げどうにか横座りをすることができた。

 ——たっ、高い……。お尻が不安定だし、怖い……っっ