虚空に現れた光の輪をくぐって白い鳩が舞い戻った。
 慌てて寝具を飛びだし、はやる気持ちをおさえながら指先で筒の蓋を開ける。

 小さな白い紙に整然と綴られた、ブルーブラックの文字の羅列が清々(すがすが)しい。

 届けられた手紙の内容に、エリアーナは長いまつ毛に縁取られたアーモンド型の大きな瞳を更に大きく見開いた。
 


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 親愛なるエリー。
 離縁とは、穏やかではないね。エリーの夫はよほど愚かな男に違いない。目の前にある大切なものに気付いていながら、手を伸ばす事をいつまでもためらっているのだから。エリー。離縁のことだが、今一度考え直してみてはどうだろう。このクロードの願いだ。あと少し、愚かな君の夫に時間を与えてやれないだろうか。

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 窓の外の宵闇はすでに深く、黒々とした木々の影を騒めきとともに地に落とす。
 書卓に向き合うアレクシスは、ふ……と小さな溜め息をついた。