鳩は静かに羽ばたきを繰り返しながら部屋の天井をくるりと一周する。そしてひとひらの雪が落ちるように、エリアーナの指先にひらりと舞い降りた。

「来てくれて有難う、ポッポ」

 丸い頭を指先で撫でたあと、鳩の足に付けられた銀筒の中に丸めた手紙を丁寧に収めた。

 異空間を瞬時に移動できる魔法鳩は、魔法省が民間に提供する生活魔法の一つだ。多くの情報を送れないものの、直接相手の元へと飛ぶため、急ぎの伝達時などに重宝されている。

「クロードに届けて……」

 華奢な指先を飛び立った鳩は再び部屋の天井を一周してから、煌めく光の輪の中へと消えていった。


 それから数時間が経ち、眠気にまどろむエリアーナがベッドに入ろうとしていたとき。