「100m走に出る人は準備してくださーい!」

どこかから声が聞こえた。

応援席から立ち上がる。

一瞬、ほんの一瞬だけ、視界が歪んだような気がした。

「くるみん、行こー」

「うん。頑張ろ!」

美緒奈ちゃんと一緒にグラウンドの真ん中へ向かう。

比較的楽な競技ということもあり、運動神経が良いとはいえないメンツが揃っていた。

美緒奈ちゃんもその1人だ。

前の列から順に走って行き、ついに私の順がまわってきた。

「位置について、よーい、ドン!」

軽快な掛け声とともに走り出す。

決して早いわけじゃないけど、超全力だ。

「がんばれー!くるみーん!」

美緒奈ちゃんが応援してくれているのが聞こえた。

…100mってこんなに長かったっけ?

数秒で走り終わるはずの100mがものすごく長く感じる。

ゴールにたどり着いた時は、息も絶え絶えだった。