「今日はスケッチブック持って来たんだ!色々描いてるんだよ〜」

藍はそう言い、不機嫌なのが丸わかりな理沙の前でスケッチブックを広げる。幼い頃からスケッチブックに絵を描くのが好きだった。このスケッチブックは何冊目になるかわからないほど、藍は絵を描いている。

最初のページに描かれていたのは鳩だった。たまたま隣街の公園に立ち寄った際、噴水で水浴びをしていた鳩たちを見た刹那、スケッチブックを開いて描いていた。

二枚目には好きなアニメキャラが、三枚目にはギターを弾く男性が描かれている。どの絵も藍にとって思い入れのあるものばかりだ。

「……」

理沙はその絵を不機嫌そうな顔のまま、見つめていた。そしてポツリと「上手じゃない」と呟く。その言葉は、何度も人からかけられた。しかし、理沙の放った言葉はどの人の言葉よりも重く感じた。藍の胸が高鳴り、顔に満面の笑みが浮かぶ。

「ありがとう。でも、落合さんに比べたら僕なんて足元にも及ばないよ。あんな風に綺麗な絵が描けるようにもっと頑張らなきゃ!」