そう怒鳴り付けた後、理沙は教室へと戻っていく。理沙の大声に教室は廊下は静かになり、重い空気が流れていく。そんな中、理沙は気にすることなく自分の席に戻り、勉強を再開した。

藍の緊張がフッと糸が切れたように解ける。勉強をしている理沙の横顔は、真剣そのものだったがどこかつまらなさそうに見えた。その顔を見て藍は思う。

(この人は、絵を描いている時は楽しそうにしているのかな……)

理沙が絵を描くところを見てみたい、先ほど怒鳴られたばかりだというのに藍はそんなことを考えていた。



それから数週間、毎日のように藍は理沙を見かけると声をかけるようになった。理沙に「絵を描いているところを見せてほしい」と頼んでいるのだ。

「落合さん!」

昼休み。中庭にいた理沙を見つけ、藍は声をかける。今日は藍の手にはスケッチブックがあった。藍が声をかけると、理沙は「最悪」と嫌悪感を隠すこともせずに吐き捨てる。美しい人形のような顔は歪んでいた。