そして迎えた昼休み。普段は友達と教室でダラダラと話しながらお弁当を食べているのだが、今日の藍は違った。素早くお弁当をかき込むように食べ、「ごめん!ちょっと行ってくる!」とポカンとしている友達に行って教室を飛び出した。

廊下を走り、理沙のいる三組まで向かう。教室のドアの前に立ち、三組の中を見る。知った顔は一人もいない。当然理沙がこの中にいる誰なのかもわからない。藍が困っていると、「何か用事?」と声をかけられた。振り返ると、女子生徒が不審そうな目を藍に向けている。

「あっ、えっと、落合理沙さんってこのクラスにいる?」

藍がそう訊ねると、女子生徒は「いる」と言いながら教室に入り、窓際の席へと歩いていき、誰かに声をかけた。勉強をしていたその生徒は顔を上げる。長い黒髪がサラリと揺れた。

雪のように白い肌、切れ長の瞳、口元にあるほくろ、スラリと長い手足、まるでギリシャ彫刻かと思うほどの美しい女子生徒が藍の前に立つ。同じ歳には見えないほど女子生徒は大人びて見え、藍の胸は緊張に包まれた。