藍がそう言うと、理沙の顔がさらに歪んでいく。空気が凍り付いたことを藍が悟った時には、もう理沙はスケッチブックを乱暴に藍に押し付け、立ち上がっていた。

「あんたのそのヘラヘラした顔見てると苛立ってくる!!将来のこと何も考えずに絵だけ描けて、お気楽で能天気でムカつくのよ!!二度と私に話しかけないで!!」

理沙はそう怒鳴り付け、中庭を大股で去って行く。その瞳は何故か潤んでいるように見え、藍は何も言えずその後ろ姿を見ていた。そんな彼に「振られちゃったな」と声がかけられる。そこにいたのは友達だった。

「あの子、落合理沙だろ?この学校の「お人形」とか言われてるぜ」

「お人形?確かにすごく綺麗な人だよね」

理沙がそんな風に言われていたのは知らず、藍が彼女の顔を思い浮かべて言うと、友達は呆れたようにため息を吐いて首を横に振る。

「違う違う。「お人形」ってそういう意味じゃないよ」

「どういう意味?」