「じゃあ、俺この後バイトだから」
「あれ? バイトなんてしてたの?」
「あぁ、先月からな」
「全然知らなかった。暇とか言ってごめん。今さらだけどモデル頼んでよかったの?」
「まだ始めたばっかりだしそんなにシフトも多く入ってるわけじゃないから大丈夫だよ」
「そっか。都合悪い日あったらいつでも言ってね?」
「わかってる。ほら、駅まで行こう」
「うん」
晶がバイトしてるなんて、全然知らなかった。
聞けば、駅前の居酒屋で働いているらしい。
「だから基本シフトは夕方からだし、午前中は暇なんだよ」
「そっか」
「沙苗は? バイトとかしてねーの? あれ? つーかお前進学? 美大決まったのか?」
思い出したかのようにこちらを向いた晶に、私は薄く笑う。
「落ちた。だから私、四月から浪人生」
複雑な気持ちを噛み締めながら笑顔でピースサインを作ると、
「マジか……なんかごめん」
と晶の方が気まずそうな顔をする。
「ううん。自分でも無理だって思ってたからいいの。ほら、さっき晶も言ってたでしょ? 全国行って自信無くしたって。私も似たようなもので、正直落ちると思ってたからあんまりショック受けてない」
三年生に上がる前まで、美大専門の予備校に通っていた。
そこには美大を目指す高校生や中学生がたくさんいて、日々講師の指導を受けながら切磋琢磨する。
その中には現代の天才画家だと思うほど上手い人がたくさんいて、凡人中の凡人の私では到底敵わないような圧倒される作品を作る人ばかり。
いくら努力しても、その才能には敵わないと思って気が引けてしまった私は、その予備校もやめてしまった。
それでも美大への憧れは捨てきれなくて、受験だけはした。だけど、案の定落ちてしまった。
「落ちて安心してる自分もいるの。万が一に受かってたとしても、こんな覚悟じゃ絶対途中で心折れてたと思うから。でも絵を描く以外にやりたいことも行きたい大学もなくて。美大しか受けなかったから見事に浪人。笑っちゃうでしょ」
いつもみたいに"馬鹿だな"って笑い飛ばしてくれればいいのに。
晶はなんだかんだ口は悪いけど優しいから、
「笑えるかバーカ」
そう言って、不器用に私の頭を撫でる。
「あれ? バイトなんてしてたの?」
「あぁ、先月からな」
「全然知らなかった。暇とか言ってごめん。今さらだけどモデル頼んでよかったの?」
「まだ始めたばっかりだしそんなにシフトも多く入ってるわけじゃないから大丈夫だよ」
「そっか。都合悪い日あったらいつでも言ってね?」
「わかってる。ほら、駅まで行こう」
「うん」
晶がバイトしてるなんて、全然知らなかった。
聞けば、駅前の居酒屋で働いているらしい。
「だから基本シフトは夕方からだし、午前中は暇なんだよ」
「そっか」
「沙苗は? バイトとかしてねーの? あれ? つーかお前進学? 美大決まったのか?」
思い出したかのようにこちらを向いた晶に、私は薄く笑う。
「落ちた。だから私、四月から浪人生」
複雑な気持ちを噛み締めながら笑顔でピースサインを作ると、
「マジか……なんかごめん」
と晶の方が気まずそうな顔をする。
「ううん。自分でも無理だって思ってたからいいの。ほら、さっき晶も言ってたでしょ? 全国行って自信無くしたって。私も似たようなもので、正直落ちると思ってたからあんまりショック受けてない」
三年生に上がる前まで、美大専門の予備校に通っていた。
そこには美大を目指す高校生や中学生がたくさんいて、日々講師の指導を受けながら切磋琢磨する。
その中には現代の天才画家だと思うほど上手い人がたくさんいて、凡人中の凡人の私では到底敵わないような圧倒される作品を作る人ばかり。
いくら努力しても、その才能には敵わないと思って気が引けてしまった私は、その予備校もやめてしまった。
それでも美大への憧れは捨てきれなくて、受験だけはした。だけど、案の定落ちてしまった。
「落ちて安心してる自分もいるの。万が一に受かってたとしても、こんな覚悟じゃ絶対途中で心折れてたと思うから。でも絵を描く以外にやりたいことも行きたい大学もなくて。美大しか受けなかったから見事に浪人。笑っちゃうでしょ」
いつもみたいに"馬鹿だな"って笑い飛ばしてくれればいいのに。
晶はなんだかんだ口は悪いけど優しいから、
「笑えるかバーカ」
そう言って、不器用に私の頭を撫でる。