「あの!」

 彼が声をかけてくれた。良かった、家までこんな変な感じで進むのかと。

「帰り道って、山本さんもこっちでいいんですか?」
「合ってるよ」

 確かに何も考えてはいなかったけど、この道は私の家へと向かう道と一緒だ。

 今まで歩き始めておよそ五分、彼の帰り道と一緒だったということだ。それだけで共通点が見つかった感じがして思わずうれしくなる。

「それで、山本さん」
「はい」
「兄弟って……いますか?」

 そう訊かれた。私には兄弟はいない。

 だが、そのことをどう伝えるべきか。私は会話が上手くない。だからこそ、ここで面白いことを一つ言ったら何か変わるのではないか。

 私の中にあるユーモア力を貸してほしい。