「いやいや、重村君は悪くないよ」

 まさか謝られるとは思っていなかった。

 もしかしたらこの話題は思ったよりセンシティブな話なのかもしれない。私が思っているよりも。

 「それに、私はもう吹っ切れているから大丈夫」
 「そう……ならよかった」

 と、彼は微笑んだ。

 そんなところで、帰り道が分岐した。

 「僕はこっちだ」
 「あ、私はこっち」
 「じゃあ、また明日ここで待ち合わせしない?」

 そう、彼に提案された。好ましい提案だ。私は今まで一人でしか登校したことがない。そんな私にとって、他人との登校は憧れることだ。


 「うん! したい」

 そう答えると、彼は「じゃあ、明日8時にここでいい?」と言った。

 いつもよりも少しだけ早起きになるが、私にとってはそれでもかまわない。
 彼にまた会えるのならば。

 そして彼に別れを告げて、家に帰った。