頭が真っ白になって、呆然とする私に高橋さんが笑顔で言った。


「奥様なら大丈夫です」

「でもっ…」


私は堪えきれないで、涙がポツン、ポツンと床に落ちた。

何が悲しいの?


鳴海が何も言ってくれなかった事


高橋さんが居なくなる事


東城の家が危ない事


もう何が何だか分からない私の、何処が大丈夫なの?

この気持ちを見透かしたように高橋さんが言った。


「大丈夫。奥様はとても強い方です」


高橋さんはニッコリと微笑んで話を続けた。


「私がここに来たのは…美代子さんに奥様を…この家から追い出すように頼まれたからなんです…。結婚前の話しも聞いていたし、大学も行かないで、何も出来ない奥様を見て始めは奥様の事、大嫌いでした」

「……」

「でも、旦那様に尽くそうと必死に頑張る姿を見て、いつの間にか追い出す処か、応援していた…。奥様の事、大好きになってたんです」


そう言って、高橋さんは涙を溢した…。


「だから大丈夫。今は大変だけど…きっと奥様と旦那様は乗り越える事が出来ます」


私は切なくて、悲しくて…。
高橋さんに抱き着いて、思いきり泣いた……。