ーコンコン


「入るね…?」


部屋に入ると、鳴海は布団を頭から被っていた。


「何かあった…?」

「何もないって言っただろ?」

「…でもっ」

「綾香は何も心配しなくていいんだ。俺の問題だから…。さっきはごめんな。俺、カッコ悪い…」


鳴海は聞いたことが無いような、今にも消えてしまいそうな声で言った。

泣いてるの…?

私は布団の中に入り、鳴海を抱き締めた。


鳴海は凄く熱くて…。
私を強く抱き締め返す。


私の服は、鳴海の涙で濡れてたんだ……。



ー翌朝


起きると鳴海の姿は無かった。
少しすると、高橋さんが呼びに来た。


「奥様、朝ご飯を」

「今日はいいわ」


胸がいっぱいで、ご飯なんか食べられないよ…。


「今日だけでいいんです。食べて下さい」


昨日深々と頭を下げた、高橋さんの姿を思い出す。

私の知らない所で、何かが起こってる?

凄く不安になった…。


「じゃあ、すぐに行くからちょっと待ってて?」


私はすぐに着替えて、食卓に向かう。

食卓には、朝ご飯とは思えないくらい、色んな料理が並んでいた。