私は急いで車を降りる。


「ただいま」

「誰だよ?」

「…?」

「誰に送って貰ったんだって聞いてるんだ!」


鳴海の怒鳴り声が、静かな住宅街に響く。

その声を聞いたのか、哲平が慌てて車から出て来た。


「大野です」

「又、お前かよ?」

「……」

「お前まだコイツの事好きなの?」


見下した様に鳴海が聞いた。

何聞いてんの?
そんな事聞いて哲平が答える訳ないじゃん…。


「はい」


三人の間に沈黙が流れた。


ねぇ、哲平…
何でそんな事言っちゃうの?

鳴海は少し苛立ちを見せて言った。


「ちょっと会社が上手く行ってるからって、調子に乗ってんなよ?」

「僕は別に…」

「綾香、行くぞ!」

「うん…。ごめん、哲平」


私は哲平に小さく謝り、鳴海の後を追う様にして、家の中に入った。

鳴海は無口で、私の顔を見ようともしない。

以前、鳴海との間でこんな事があったけど、あの時とは違う気がした。

女の気配だってない。
鳴海からピリピリした空気を感じるんだ…。

鳴海は足早に鳴海の部屋に向かい、私は大きく息をして、部屋に向かう。