「私、そろそろ帰るね」


少し変だった鳴海が気になるんだ…。


「じゃあ俺、送るよ」

「あぁ、頼むよ」


ビールで顔を真っ赤にしたパパが言う。

私は哲平の車に乗り、鳴海が待っている家へと向かった。

ねぇ、何か変だよね?
パパと元カレが仲良しで、旦那である鳴海がここに居ない…。

考えれば考える程、私は無口になった。


「どうした?」

「…何となく、変だなって…」

「何が?」

「哲平に家まで送って貰うのも、あーやってご飯を食べるのも…」


私は哲平の答えを待った。


「そうだよな…。俺はあそこにいるべき人間じゃない。けど、綾香に会いたかったんだ」


哲平はそう言うと、悲しそうな顔をして笑った。

そんな顔をされると、言ったらいけない事を言ってしまった気がするじゃん…。

私、結婚してるんだよ?


「でも…」

「言うなよ。言わなくても分かってるんだ。頭で気持ちがコントロール出来たらいいのにな…」


その後も、私も哲平も黙ったままで、車のBGMだけが、悲しく響く。


「着いたぞ?」


窓の外をボンヤリ見ていた私は、家に着いた事にも気付かない…。

その時、家の玄関から鳴海が出て来る姿が見えた。