急いで向かったキッチンには、もう二度と見る事がないと思っていた、ママの姿があった…。


「帰って来てたんだ?」


私は自然と自分の顔が、満面の笑みになっていくのが分かる。


「えぇ。心配かけてごめんね」

「でも、何で…?」


きっとママと一緒にいた男の人は、ママがずっと想っていた電話の人だよね?

ママが帰って来たのは嬉しいよ?
でもやっと一緒になれたんじゃないの…?


「お父さんがね、迎えに来てくれたの。お父さんの顔を見た時は殴られるのを覚悟してたけど、必死に謝って…頭を下げる姿を見るとね」

「パパが…?」


私、パパがママに謝る姿なんて見た事ないよ?


「それに、政治家の妻が嫌なら、政治家を辞めてもいいんだって。次の選挙は出ないって、必死なお父さんを見てるとね、私の帰る場所はここしかないんだって思えて来たの」


そう言ってママは凄く幸せそうな顔をした。


「そんな話はいいんだ!それより綾香、鳴海くんはどうしたんだ?」


恥ずかしさに耳を真っ赤にしたパパが言った。


「鳴海さん…体調悪いみたいだから」

「そうか…。ここに来ていていいのか?」

「…うん。大丈夫」