「ただいま」

「お帰りなさい」


珍しく鳴海が早く帰って来ていた。


「今日は早いのね」

「あぁ。それより何処に行ってたんだ?」


鋭い目で鳴海が私を突き刺す。

一瞬、マリナの家って言おうかと思った。
でも、今の鳴海の目…。
私に嘘を言わせない目をしている。

パパのお使いだもん。
本当の事をいっていいよね?


「実家に帰ると、パパから哲平のとこにお使い頼まれて…」

「ふ~ん。やっぱり親子だな」

「えっ…?」


きっとこの頃からだと思う。
鳴海が変わったのは…。


何があったのかなんて、私はまだ知らないんだ……。


ー翌日

パパから電話があった。


「はい」

「綾香か。昨日は良い事があったんだ。鳴海くんを連れてうちに帰って来なさい」

「いい事って…?」

「帰ってきたら分かるよ」


今迄聞いた事がない、穏やかなパパの声だった。

鳴海も帰宅が早く、私はその事を鳴海に伝えた。


「でね、鳴海さんと一緒に来いって」


私は必死に明るく言った。
鳴海の昨日の突き刺すような目が、焼き付いて離れなかったから…。


「俺は行かない」

「何で…?」

「そんな気分じゃないんだ」